秘匿性が高く、凶悪犯罪の温床にもなっていた通信アプリ「テレグラム」に対し、世界各地で捜査のメスが入り始めた。高度な暗号化技術が追跡の障害となってきたが、性犯罪や薬物売買など「犯罪のデパート」（韓国・朝鮮日報紙）とも称される現状に各国が危機感を共有。捜査協力に応じてこなかったテレグラムも対応を迫られている。

フランス警察は8月24日、テレグラムが犯罪の連絡手段に利用されていることを放置した容疑で、創業者で最高経営責任者（CEO）のパベル・ドゥーロフ氏（39）をパリ郊外で逮捕。アプリ内の＊取引や詐欺行為、児童の性的虐待データ拡散に対する共謀罪などで正式な捜査に乗り出した。

テレグラムの創業者で最高経営責任者のパベル・ドゥーロフ氏（ロイター）
テレグラムの創業者で最高経営責任者のパベル・ドゥーロフ氏（ロイター）
テレグラムは、メッセージのやり取りが暗号化され、運営側も内容を確認できないのが特徴。最大20万人の参加が可能で、違法データや偽情報の拡散が容易な「スーパーグループ」機能も悪用されてきた。米メディアはサイバー犯罪の専門家の発言を引用し、あらゆる違法行為の「グラウンド・ゼロ（中心地）」と表現する。

米紙ニューヨーク・タイムズは今月7日、情報発信に利用される1万6000件超のアプリ内の「チャンネル」を分析した結果、大型チャンネル22件が国際＊取引に関与していたと報道。武器取引業者や人種差別団体の活動も確認された。一方、テレグラムの正規職員は約60人にとどまり、元職員は同紙に、政府機関の問い合わせに対応することはほぼないと証言した。

これに対し、ドゥーロフ氏は逮捕後の声明で、テレグラムが毎日数百万件の有害な投稿やチャンネルを削除していると主張。「『無秩序な楽園』というのは全く真実でない」と訴えた。

仏当局の捜査を受け、巨大IT企業に違法コンテンツの排除を義務付ける欧州連合（EU）も、テレグラムへの規制強化を「躊躇（ちゅうちょ）しない」との立場を表明。人工知能（AI）で性的な偽動画・画像を生成する「ディープフェイク」の被害が拡散する韓国でも今月、警察当局がテレグラムの現地法人に対する立件前調査に着手し、仏捜査当局と連携する方針を示した。

https://www.sankei.com/article/20240916-C7DLG5LYNZIIBI6TAI27C3DITI/